ホーム > 市政情報 > 計画 > 企画調整局の計画・事業等 > 神戸市と大学等との連携の取り組み > 大学発アーバンイノベーション神戸(若手研究者の研究活動経費助成制度) > 2022年度 大学発アーバンイノベーション神戸 採択研究
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本研究では、神戸市内の六甲山系以南の都市公園12か所を対象に、公園の生物多様性が市民利用行動に与える影響を明らかにする。研究方法は、市民の利用行動は、調査員による目視でのアクティビティ調査により、個人属性及び利用行動を記録・収集する。生物多様性は、都市緑地における指標種として一般的に用いられる鳥類に着目し、調査員がさえずり音声を対象地で収録し、その音声データを機械学習技術を用いて解析し、種および種数を推定することで、公園の生物多様性指数を算出する(資料1)。これらのデータをもとに、市民利用行動を目的変数、生物多様性指数を説明変数とするロジスティック回帰分析により相関関係を明らかにする。市民のレクリエーション利用と生物多様性に共便益をもたらす都市公園の条件を考察することで、新たな緑地マネジメントの手法【Living Nature Kobeモデル】をグリーンインフラ計画論として提案する。
本研究の目指す最終目標は、「学校校庭の芝生化」および、「農地への有機肥料の施用」による土壌中への炭素貯留量の増加ならびにその定量化により、「神戸市地球温暖化防止実行計画」における新たな二酸化炭素吸収源対策を実現することである。
学校のグラウンドを芝生化することや、土壌に有機物を施用することは土壌炭素貯留につながることが明らかになっている。しかし、これらの実証事例は少ないことが現状である。本研究では、芝生の有無や有機肥料の施肥の有無また施用の前後に土壌分析として炭素量、窒素量、微生物量を測定することで、その効果を定量化する。その過程の一部で、未・低利用資源の活用として、神戸市内で発生した給食残渣の堆肥化を行い、その施用を学校菜園で実施し、有機農業に応用する前の予備的な試験とする。
また、これらの取り組みについて学校現場で児童・生徒を対象とした環境教育の一環として、有機農業の推進のための教育・普及活動を展開する。この学校現場と農業現場の両輪で行う取組を「神戸市地球温暖化防止実行計画」においても新たに位置付け、将来的には「こうべCO2バンク」によるクレジット申請も目指す。
本研究では、NFTの社会的な特徴として 1)トークン通じたコミュニティ形成 2)公的事業の暗号資産を介した支援、の2点に着目して主にジェネラティブアート分野での利活用について調査を行う。表現分野をジェネラティブアートに絞る利点は、一つのコードから複数のグラフィックをバリエーションとして生成可能な点であり、一点物のNFTアートと比較したときに定量的な評価が得やすい、またデザイン都市を謳う神戸市のこれまでの活動にも則している。研究は調査と実践の2つのフェーズで実施する。調査段階では、国内外のNFTアートの展示や作品発表における事例調査や関連イベントの視察を行う。実践としては、NFTアートに関連したワークショップを通じて技術的な知見を公開し、その後フィールドワークや文献調査を通じたリサーチに着想を得て、ジェネラティブアートによるNFTの試験的鋳造を行う。
神戸市では、高度経済成長期以降に造成された郊外住宅地において、近年人口減少が進んでいる。背景にある要因は複合的だが、本研究ではとくに景観や街並みに注目し、生活者が日々経験している環境の美的性質を洗い出すために、「キャプション評価法」を用いてデータを収集する。
近年の美学研究では、たとえば風景を眺めて美しいと感じることは、美的な快の経験にとどまらず、「よく生きること well-being」に寄与する倫理的価値をもつことが示されている。郊外住宅地では、短期間で人工的に形成された街並みが、無機質、画一的などとしてしばしば否定的に評価される。では、そのような環境では美的経験を拠りどころとするwell-beingは実現できないのだろうか?実際の生活者は、街並みを形成する要素(形、色、構造、雰囲気など)をどのように評価しているのだろうか?本研究では、これまであまり注目されてこなかった郊外住宅地の美的性質を、生活者自らが注目する要素と語る言葉に基づいて詳らかにし、都市環境の再生・活性化に向けたデータ収集と基礎理論の構築を目指す。
本研究では神戸の歴史文化の継承を目指し、基礎となる地域資料の保存と住民と連携した活用方法の検討を、博物館活動と組み合わせて実践的研究として取り組む。
具体的には、特に神戸を特徴づけている海・港湾にかかる地図資料類(航路絵図、旧版地図、景観写真など)に着目し実施する。①当該資料を最近、神戸大学海事博物館において多数発見しており、地図資料類を詳細に調査して、海港都市神戸と沿岸港町等の相互の繋がり、人や物の交流の発達と空間的な変容について歴史地理学的研究に取り組み、沿岸域の地誌的様相を提示する。②①の資料の目録・データベース化を行い、学術的成果について展示など普及活動を実施するとともに、学生や地域住民とより分かり易い活用方法を試行検討し、共有を図る。
2020-2021年に本助成を受けて実施した調査研究では、戦争や震災、様々な病といった困難を乗り越える共同作業を通じて「海港都市・神戸」独自の景観や文化が形成されてきたことを明らかにした。外国人住民を含む多様なアクターたちが、地域での協働により神戸の魅力的な多文化の空気を創出してきたわけである。
そうした魅力をさらに発展させるため、本研究ではさまざまなバックグラウンドを有する子ども・若者(「外国ルーツの子どもたち」・国籍は問わない)を文化創造の中心的な担い手として位置づけ、長期的視座に立った支援体制と当事者参加ネットワークの確立を目指す。具体的には各種支援団体・教育機関の現場の取り組みを収集分析し、そこに蓄積された知恵や経験を共有・豊富化する作業を行う。さらに、行政や研究者も参与した協働作業により、従来の視点とは異なる、地域文化に対する多様で創造的な視座をより効率的に導入し活用するための体制構築が可能となる。こうした取り組みを通じ、外国ルーツの子どもたちが有している豊かな文化的資源を発掘・開発し、多文化都市・神戸の未来創造へ向けたビジョンを提示する。
神戸ユニオン教会には最近100年間の歴史資料(史料)が所蔵されており、その数は英語史料だけで4万~5万点に上るとされる。他方でドイツ系コミュニティの中心的教会でもあったためドイツ語史料も所蔵されているが、概数は不明なもののこちらも膨大な量が保管されている。こうした史料を利用可能なものにするためにも、まずはそれらを整理し、また目録化することが求められており、同教会の財政的支援も受けながら、研究代表者である衣笠太朗のほか、神戸大学および他大学の教員・学生・院生に協力を仰ぎながら研究を遂行する予定である。
コロナ禍を通して、人々の都市公園への意識や行動が変化しつつある。都心・三宮の再整備では賑わい創出の拠点とされた都市公園だが、人々はこれまでの飲食施設やイベントへの要望よりも広い空間と緑(自然)を求めるようになってきている。未だ続くコロナ禍では、人々の意識、行動は時間経過や感染状況でも変わるため、継続調査により、その傾向を確度高く把握し、神戸市のまちづくりに反映させる必要がある。一方、賑わいが戻りつつある都市空間では感染症への対策の他、夏期の熱中症対策も重要である。街路樹空間は緑による清涼感や緑陰による温熱上昇の緩和効果を持つことから、公園に相当する新しい緑地空間として利用することで、空間、緑、快適性の担保や拡充が可能である。
従って、本研究は東遊園地を対象に都市公園に対する人々の行動、意識の変容を捉え、今後の課題を明示し、これからの都市公園、緑地に必要な要素を抽出する。さらに、街路樹空間の実態と可能性を客観的に明らかにし、緑生都市としての新しい展開を提案する。
2020年3月の神戸市障がい者生活実態調査によると、神戸市内に住む障害のある人の就労状況は55.7%と約半数が無職である。加えて、神戸市において一般企業で働くことが難しく、雇用契約を結ばず生産活動や就労訓練を行う就労継続支援B型事業所に通っている257人の平均工賃は10.69(千円)であり、全国平均工賃16.12(千円)を大きく下回る。働けないことは単に経済的な苦しさだけでなく、社会的孤立・孤独に繋がるリスクがある。そのため、神戸市における多様な働き方の実現とその場所の構築が急務である。神戸市は障害のある人が週に1回、1〜2時間だけ働くという超短時間雇用に取り組んでいる。しかし、通常の求人サイトでは取り扱ってもらえないなど周知手段が限られており、一般市民にとっては遠い存在である。神戸大学生においてもその取り組みを知る者はいない。学生は現時点で障害者雇用に関係なくとも、障害者雇用促進法により企業は従業員の一定割合以上の障害者を雇用しなければならず、就職先で障害のある人に出会う可能性が高い。学生が多様な雇用形態を知ることで障害のある人への態度の変容も期待される。本研究では障害のある人の雇用機会の提供と月額収入の向上、ならびに学生への多様な働き方の周知をおこない、インクルーシブな街づくりの第一歩を生み出すことを目的とし研究室における障害のある人の超短時間雇用のモデルケースを確立する。
日本は新型コロナウィルス感染症流行によりほぼ停止していた外国人の入国を2022年から徐々に再開しつつある。多くの外国人が居住・訪問する神戸にとって、パンデミック下あるいは後において外国人が安心かつ快適に訪問・居住する魅力的な環境を再構築することは、神戸における外国人と日本人の共生、神戸の文化・経済的発展に不可欠である。
本研究は、神戸に滞在・訪問している外国人、それを予定している外国人、日本人の3者が、感染症流行下・後において、外国人が神戸に滞在するうえで期待していること、必要としていること、不安に感じていることなどの意識を明らかにする。そのために、3者に意識調査、フィールド実験、インタヴューを実施する。
本研究から期待される研究結果は、外国人が安心かつ快適に居住、訪問、就労、就学するために必要な支援を特定することで、外国人・日本人が共生し、さらに外国人が就労、就学、コミュニティへの積極的参加を通して経済・学術・技術的面で神戸の発展に貢献する具体的施策を提示できることである。
本研究は、安心安全な都市計画、社会システムの構築のため、市民に身近な街区表示板に着目し、災害時に有効な避難活用方法を検討する。神戸市内には約18,000区域(1区域につき3、4枚)の街区表示板があるが経年劣化が課題となっている。そこで、南海トラフ巨大地震で被害が想定される地区をモデルで選定し、その地区で補修や貼り換えの必要性を調査し点検、更新の手法を検討する。それに併せ街区表示版へ情報記載など視認性、防災性等を高めた新たなデザインや付加板を検討し、市民生活により有効な街区表示板の調査研究を行う。
以下のように、研究を進める。(1)設定したモデル地区(1~2小学校区を想定)で街区表示板の経年劣化等の状況について全数を把握する。(2)関連法令・条例や過去の経緯を調査し、機能性、視認性、減災デザイン性等の検討を加える。(3)街区表示板を活用した災害時要配慮者の避難支援方法について検討する。(4)新たな街区表示板・付加板の見本を作成する。
地球温暖化は、すでに私たちの生活環境や社会・経済活動に影響を及ぼし始めている。温暖化に対する社会的適応が求められるなか、都市緑地の温暖化適応策が急務となっている。都市緑地や樹林地、街路樹などのグリーンインフラはヒートアイランド現象による気温上昇や集中豪雨による洪水を緩和するなど、私たちの生活に欠かせない環境調節・防災機能を担う一方で、温暖化によって植物が衰退すれば、これらの機能が損なわれてしまう。本研究では、グリーンインフラの持続的管理による快適で安全な生活環境の実現に資するため、神戸市内の緑地や樹林地を対象に、市民による緑地利用の実態調査を行い、神戸市の都市緑地に求められる社会・経済・環境的機能を明らかにする。調査結果をもとに、市民が求めている緑地の機能と持続的な維持・管理を両立するグリーンインフラ整備戦略を立案する。
本研究では、神戸市におけるSNS投稿を活用しながら、市民の「妊娠・出産・子育て支援」における心理的欲求を明らかにする。
具体的には神戸市のSNS投稿を収集し、自己実現理論の枠組みで提唱された5段階説に基づき抽出した「妊娠・出産・子育て支援」における心理的欲求コーパスを作成することを目的とし、国内利用者数の多いSNSの一つであるTwitterを対象とする。人々はTwitterのテキストによる自己紹介やリアルタイムの近況報告機能を通じて、ユーザーの日々の考えや気持ち、感情などのパーソナルデータを表現している。これは、個人の行動や感情状態を理解するための豊富な情報源であると考えられている。
本研究では、アフェクトアウェアシティ*に関する新たな知見を提供し、人間の基本的欲求に関する個人の経験を分析することを目的としている。また、神戸市民を取り巻く社会的文脈をよりよく理解するためにも利用できる。
本研究では、都心・三宮を通る海と山を結ぶ地勢の南北軸に注目し、その感性的価値を深く掘り下げることで、これまでにない神戸の魅力を顕在化させ、神戸固有の歴史と紐付けて世界に発信する方法について明らかにする。
現在、三宮を中心に再開発が進んでいるが、固有の地勢を生かす手法は未発達であり、近隣都市と横並びの風景が生まれるのではないかとの課題認識を持っている。本研究では、地勢に恵まれた神戸ならではの多様な「匂い」や「音」といった視覚情報以外がもたらす感性的価値と、固有の歴史文化との紐付けを行い、その心象風景の意識化を実施する。
具体的には、新神戸駅北側布引地区と神港突堤界隈を軸を代表する自然、歴史環境を有するサンプリングポイントとし「匂い」と「音」を収集・整理し、心理・生理効果に関する評価とそこに歴史文化的な説明を加えコンテンツ化を行い観光資源開発に繋げる。また発展的に歴史的建造物の改修設計や回遊インセンティブ設計、また匂い(気流)のランドスケープ、音のサウンドスケープといった環境工学的な修景にも繋げ、海と山の街、神戸の風景を整えていきたい。
神戸は、歴史・文化・芸術に富んだ日本有数の大都市であると同時に、海や山に面した自然豊かな都市でもある。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響により、大都市の経済成長の源泉である外部からのビジネス・観光需要は落ち込んだままである。さらに、構造的な問題として人口減少に直面しており、都市内部の需要も減少することが予想される。今後、withコロナ・ポストコロナを見据えながら、いかに外部地域からビジネス・観光需要を継続的に取り込めるのかが神戸の経済成長の鍵となる。本研究では、人流データを解析することで、どのような目的で、どのような手段で、どこから神戸に来ている人々がにぎわいを創出しているのかを明らかにする。さらには、人が集まることによって神戸の商業活性化につながっているのかを統計分析により明らかにする。本研究により、人流データを活用した新たな政策立案の枠組みの提示を目指す。
本邦における認知症の患者数は、2025年に730万人になることが予想されており、認知症の早期発見およびその予防対策が喫緊の課題となっている。認知症予防に寄与する介入法に関するエビデンスが蓄積されつつあるにも関わらず、認知症予防対策を実現するためのシステム構築は推進されていないという課題がある。その課題解決のため、様々な阻害要因や促進因子がある現実的な条件下での予防介入効果効果(effectiveness)の検証およびスマート神戸を利用しての社会実装の拡大化に向けた課題抽出を行う。具体的には神戸大学で開発・展開している認知症予防を目的とした社会実装事業「コグニケアプログラム」とスマート神戸を利用し、18ヶ月間の予防介入プログラムを実施する。そこから得られた結果を申請者らが丹波市で実施中の認知症予防を目指した多因子介入によるランダム化比較試験(J-MINT PRIME Tamba)、すなわち研究対象者の選定や介入条件などが理想的な条件下で示される介入効果データ(efficacy)と比較検討することで、effectivenessの検証を実施する。認知症にやさしいまちづくり条例を施行している神戸市においてその条例に謳われている「認知症予防」を具現化するシステムを構築し、新たな認知症神戸モデルの発信につながる。
当院看護部が2020年6月より実装させている模擬患者カルテに搭載している模擬患者事例に合わせた患者VRモデルを製作し、学生が患者に会えないことで学習困難となっている「病状観察」や「コミュニケーション」をバーチャル空間内で経験させる教材作成を行う。
当院看護部では、2020年~2021年度は実習代替として模擬患者症例を用いながらオンラインでの指導を行った結果、従来の実習目標の9割が達成できることが確認された。達成が難しかった目標は、「術後の観察」と「患者とのコミュニケーション」であった。これらの課題を解決するために、バーチャル空間内に患者VRモデルで病状観察が出来るように検査画像や創部を再現し、学生からの質問に回答をするためのChatbotを活用したコミュニケーションシナリオを構築する。開発した教材を用いた実装試験を行い、これまで臨地実習で求められた学習の安定的な提供と看護師養成を実現させ、災害や感染症の影響を受けない地域の医療人材の養成に貢献するものである。
神戸市北区・西区の都心に隣接した農村地域という特色を活かし、都市部在住者の心身の改善に繋がる農作物の摂取・農作業体験を提供するサービスプラットフォームを構築することで、農村部と都市部との交流を促進し、両地域の心身かつ社会的Well-being向上を目指す。まず、脳と心に良い農作物と農作業を特定するため、農家の協力を得て豊富に農作物を食べ、日々農作業を行う人々の脳を、脳ドックに導入してきた脳の健康指標「BHQ」算定と心理質問紙により評価する。次に、脳と心の健康に良い農作物の摂取と農作業を、特に疲労や食運動習慣の乱れを感じている都市部在住者に3カ月間実践頂き、BHQを用いて効果を検証する。これらの結果をもとに、都市部在住者の脳と心の状態に適した農作物と農作業を提供するサービスプラットフォームを構築する。この仕組みを用いて脳に良い農作物と農作業の選択による行動変容を把握し、都市部の健康と農村部との交流を計量経済的に評価する。
運動処方による適切な強度の運動は、健康寿命を延伸しリハビリテーションを安全に行うことができる。本研究では、生理的反応をフィードバックして運動強度を調整する運動機器の制御装置を個人の運動データから直接最適設計することで、個人ごとに最適な運動を提供する。最適化の指標として、目標とする運動強度と実際の運動強度の誤差分散として定義される評価規範を最小化するよう設計する。この結果、健康維持に必要な運動を安全に実現できるメリットがある。さらに、心拍変動データから得られる自律神経活動指標に基づいて制御することでリラックス状態での運動が可能となるため、体の健康だけでなく心の穏やかさも保ったウェルビーイングを追求できる。本研究では健康維持行動を自発的に促す技術を提供できるため、心身共に健康を維持できる神戸市の社会基盤の構築やSDGs(すべての人に健康と福祉を、および、働きがいも経済成長も)の達成に貢献できる。